民事信託Q&A

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民事信託Q&A

1.信託とは

信託とは、(1)特定の者(受託者)が、(2)財産を有する者(委託者)から移転された財産(信託財産)につき、(3)信託契約、遺言または公正証書等による自己信託により(信託行為)、(4)一定の目的(信託目的)に従い、(5)財産の管理または処分およびその他の当該目的の達成のために必要な行為をすることです。(信託法2条1項)

2.信託の起源は?

  信託は,中世ヨーロッパにおいて十字軍の遠征に参加する兵士が,信頼のおける友人を受託者として土地を信託し、帰還するまでもしくは万一の戦死に備えて家族のために管理運用させて,その収益を兵士の家族に給付させ所有地が没収されず承継されるようにしたことが起源の1つとして取り上げられています。

3.信託の特徴は?

  通常、自分が所有権を有する財産は自分でまたは他人に委託して管理もしくは処分しますが、信託では「受託者」という第三者によって長期にわたり財産管理・処分を行うことになります。
  委託者の所有権は、契約・遺言・公正証書等によってする意思表示(「信託行為」といいます)で受託者に移転されて、受託者の信託財産となります。受託者は信託財産の名義人となり、信託財産について唯一、管理もしくは処分できる権限がある者となります。しかし、その管理もしくは処分できる権利を行使する場合は、信託の際に締結された契約の目的に拘束され、受託者は、受益者のためのみに任務を遂行しなければなりません。ここが、長期間の管理もしくはノウハウがいる処分について他人に託す通常の方法と異なる大きなポイントで、受託者との信認関係が前提となる仕組みです。

4.信託の機能とは?

(1)財産権の性状の転換
  委託者は、信託前は財産に対して所有権という物権的権利を持っていましたが、信託によって、そこから生じる利益を受け取るという債権的権利(「受益権」といいます)に変わります。つまり、財産権の性状が変わることになります。
(2)主体の転換
  委託者の所有権が受託者に移転して、それを受託者が管理もしくは処分することで受託者の信用・ノウハウを活用することができます。つまり、委託者や受益者の事情に左右されずに、当初結んだ信託契約の目的に沿った財産の管理もしくは処分が可能となります。また、利益を得る受益者を変更・承継により転換できます。
(3)倒産隔離
ア.委託者からの倒産隔離
  信託財産は受託者に移転されるので、原則、委託者の倒産の影響を受けません。(ただし、債務者である委託者が、その債権者を害することを知りながら、自己の債務を逃れるために信託を設定したような場合、受託者が善意であっても当該信託は債権者詐害信託となり、委託者の債権者、当該信託を訴えによって取り消すことができる、とされています。)
イ.受託者からの倒産隔離
  信託財産は、受託者が分別管理等の義務を果たしていれば、受託者からの独立性が法的に担保されており、受託者の倒産の影響を受けません。

5.民事信託とは?

  「信託業法」では、「信託の引き受けを営業」として行おうとする場合には、免許が必要と規定しています。「営業」とは、営利を目的として、不特定多数の者を相手に、反復継続して行われる行為をいいます。
  そこで、営利を目的とせず、特定の1人から1回だけ信託を受託しようとする場合には、信託業の免許は不要だと考えられますが、このような信託を「民事信託」と呼びます。また、今日では、財産の管理、財産の承継を目的とする信託、管理できない人に代わって管理して生活に必要な給付を確実にする信託、自己の判断能力の低下、死亡に備えて財産の管理・承継をする信託、高齢者・障害者等の財産管理・身上監護に配慮した生活支援のための信託などの信託を民事信託と呼んでいます。
  「民事信託」を使って委託者と受託者との間の信託契約をオーダーメイドで設計することにより、個人や中小企業等でも容易に活用ができることになります。